2015年の秋、安保法案に反対する国会前のデモのニュースが、テレビからながれる。老人ホームで余生を過ごす98歳の元落語家、金山亭我楽こと藤尾純次(岡本富士太)の胸に、故郷瀬戸内の島の一人の僧侶・杉原良善(中原丈雄)の姿がよみがえる。
1932年(昭和7)、日中戦争から太平洋戦争に向かう戦争の時代。噺家になりたい13歳の純次(松田優佑)の背中を押したのが良善和尚だった。
東京へ弟子入りし落語家となった純次(小倉レイ)は、出征のため6年振りに里帰りし和尚と再会するが、境内での出陣式で、良善は突如「戦争は罪悪で人類に対する敵、すぐにでも止めたほうがええ」「逃げて帰って来い。人殺しはするな」と説教を始める。
それまで戦争に協力する説教を語っていた良善のこの変化には何があったのか……。
しかし8月、本土が終戦に向かう中、樺太にはソ連軍が迫っていた。樺太に残る夫との再会を約束し、てつは二人の息子を連れて網走へと逃げ延びる。
時は流れ1971年、次男の修二郎(堺雅人)はアメリカに渡って成功し、米国企業の日本社長として帰国する。15年ぶりに網走へ母を訪ねると、そこには年老いたてつの姿があった。一人暮らしが心もとなく思えるその様子に、再び母と共に暮らす決意を固める修二郎。しかし想いあうがゆえに母子はすれ違いを重ね、立派になった修二郎に迷惑をかけたくないと、てつは一人網走に戻ろうとする。
母に寄り添いたいと願う修二郎は、二人で北海道の各地を巡り、共に過ごした記憶を拾い集めるように旅を始める。再会を誓った家族への想い。寒さと貧しさに耐え、懸命に生き抜いた親子の記憶。戦後の苦難を共にした懐かしく温かい人々との再会。幸せとは、記憶とは、そして親子とは。
そして満開の桜の下で明かされる、衝撃の結末――
三木知世(沢口靖子)は、転勤で小学3年のミチル(岩崎未来)のクラスを担当する。
ミチルは、家では少し話せるのに学校では話せない。
一人でトイレにいけない、一人で給食を食べられない、歌えない、絵を描かない…。
「場面緘黙症」の疾患を持つミチルに、知世は、共感と愛情をもって接する。
同じクラスに、問題行動の多い安川純平(向鈴鳥)がいる。
離婚した母親の理恵(柊子)と純平は貧しい生活を送っている。
教室に飛び込んで来た青いインコを巡ってミチルと純平は幼い友情を芽生えさせる。
しかしある日インコが逃げ出してしまう…。
様々な問題に奔走する知世は、子どもたちの〈涙〉を〈希望〉に変えることができるのだろうか。
2本の映画をつくって、今考えることは、様々な「なぜ!?」だった。いつも言うが、私はジャーナリストでもなく冤罪専門の映画監督でもない。何か使命感に駆られて映画をつくっているわけではない。それでも映画づくりの中で嫌と言うほど権力の非道を思い知らされた。同時にそれらを引き受けて生きる人たちの魅力に引きつけられて映画をつくってきた。
「また冤罪映画!?」と思う人もいるだろう。しかしどうしても描かなければならないものがある。
彼らは人生のほとんどを獄中で過ごした。いわれの無い罪を着させられ、嘘の自白を強要され、獄中で親の死を知らされた。奪われた尊い時間は決して取り戻すことができない。しかし、絶望の縁にいたはずの彼らは声を揃えて言うのだ。「"不運"だったけど、"不幸"ではない、我が人生に悔いなし」と。
孤独な青年と夢忘れた老婦人。碁石がつなぐ、国を越えた人との温もり
●最優秀作品賞●最優秀監督賞・最優秀脚本賞・優秀編集賞「是枝裕和」
●最優秀主演女優賞「安藤サクラ」●最優秀助演女優賞「樹木希林」
●最優秀音楽賞「細野晴臣」●最優秀撮影賞「近藤龍人」●最優秀照明賞「藤井勇」
●優秀主演男優賞「リリー・フランキー」●優秀助演女優賞「松岡茉優」
●優秀美術賞「三ツ松けいこ」●優秀録音賞「冨田和彦」
――第71回 カンヌ国際映画祭――
―― その他国内・国外合せて32の各映画賞にて受賞・ノミネート作品 ――
一つの目標に皆で必死に立ち向かう中、知らず知らずのうちにそれぞれが信頼を回復し、結婚という枠にとらわれない新たな家族の姿が見えてくる。
「とら屋」一家の再生と商店街の生き残りにかける店主たちの人間模様を描いた、笑いと涙のハートフルコメディー!